介護施設整備 どうなる都市の高齢者

高齢化が問題なのは過疎地だけではなく、むしろ都市部が深刻な事態に直面していることをもっと知るべきだ。高度成長期に都市部に流入した団塊世代の高齢化はすでに始まっており、特に首都圏(1都3県)では2005年からの10年間で65歳以上の人口が270万人も増え、75歳以上も150万人増える。15年の首都圏の高齢化率は25%になるのだ。

そのため介護施設は急ピッチで整備しなくてはならないが、現実はどうか。厚生労働省は06~08年度に自治体が計画した介護施設などの整備状況を発表した。特別養護老人ホーム、老人保健施設、認知症グループホームなどの介護施設は約8・1万床で、計画総数(約11・5万床)の71%にとどまっている。06年に国が全廃の方針を決めた介護療養病床を計画に盛り込んでいる自治体もあり、これを加えた計画総数でみると45%しか達成していないことになる。特に介護の必要性の高い高齢者の受け皿である特養ホームなどの整備が遅れている。

京都(39%)、東京(44%)、千葉(49%)、滋賀(53%)、神奈川(54%)など首都圏や近畿圏の自治体の達成率の低さが目立つ。地価が高くて土地の確保が難しい、人材確保が困難などの理由のほか、03年度と06年度に介護報酬が引き下げられたことも影響したとみられる。

今年3月に火災で10人が犠牲になった群馬県渋川市の高齢者施設「静養ホームたまゆら」では入所者の過半数が東京都墨田区からの紹介だった。都内の特養ホームの定員は約3万5000人だが、それを上回る待機者が存在する。過疎地に施設を建設して都内の高齢者を収容する「都外施設」の問題は、以前から「棄民政策」などと批判されていたが、要介護者はそこからもあふれ、劣悪な無届け施設に流れているのである。

あまり語られていないが、今は精神科病院も介護難民の受け皿になっている。精神科病院に入院する認知症の高齢者は年々増え、05年現在で約5万2000人に上る。わが国の精神科病院は長期に及ぶ社会的入院の問題が以前から指摘されており、医療の必要があまりない入院患者を減らす方策が取られている。実際、統合失調症の患者は減っているが、それと同じ数だけ認知症の高齢者が穴埋めをしているのが実情で、現在は入院患者全体の16%を認知症が占めるに至っている。

民主党は「介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する」と公約に掲げ、介護労働者の賃金の月額4万円引き上げ、療養病床削減計画の凍結などに8000億円投じるという。年金や医療もさることながら、介護難民対策は待ったなしだ。
毎日jp

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